第一章

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こうして龍興率いる本隊、半兵衛の兵五百と弘就の兵千、あわせて千五百を差し引いた本隊七千五百は清洲へ向けて再び進軍を開始した。 その頃、撤退の知らせを受けた小牧山城主、池田恒興は声高らかに嘲笑した。まさに斎藤勢、恐るに足らずと勢いづいた。 「所詮は愚将、龍興よ!それ尻尾を巻いて逃出した、美濃の弱兵達に目に物見せてやれ! 全軍出陣じゃ!」 そして城内にはわずかの兵を残して、城を飛び出し、斎藤勢の最後尾から崩さんと猛烈な勢いで飛び出した。 「――敵が城から出たぞ!それ、退路を断つのじゃ!」 池田軍が斎藤勢の最後尾に突撃するが早いか、竹中、日根野両名の軍勢が近くの林から飛び出し、城と池田勢の間を両断する事に成功した。 池田勢が必死に斎藤勢を攻撃しているが、退路を断たれ、完全に挟撃の形になってしまった。 「――ま、まずい。退路を断たれたか。全軍、引き返せ!何としても城に戻るのじゃ!」 恒興の号令一下、兵達は混乱しながらも慌てて城に戻ろうと挟撃軍に攻撃を開始した。 「させるか!全軍取って返し、池田勢を討ち取れ!」 だがその退却する軍勢に、龍興の号令の下に素早く軍を返した斎藤勢が襲いかかる。 もはや戦況は目に見えていた。
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