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「――わかりました。それでは私は、ここで失礼させて頂きます。
御免!」
一瞬悔しそうな、苦虫を噛み潰したような表情をした守就は、吐き捨てるようにそう言うと、さっさと商家を出ていってしまった。龍興は守就の後ろ姿を睨み付け、再びおちょこに口をつけた。
「――守就の奴め!わしを誰だと思っておるんじゃ!美濃の国主、斎藤龍興じゃぞ!無礼な奴め。」
そうつぶやくと、龍興は気怠そうにゆっくりと立ち上がり、懐から小判を二、三枚取り出した。
そしてそれを商家の主人に投げ付けた。
「全く興冷めじゃ!わしは帰る!」
「は、ははっ。」
龍興はいかにも嫌そうな表情で、平伏している主人に向かって唾を吐き捨て、またまた足早に店を立ち去った。
そして近習の者も、急いで後を追った。
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