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「才能は天から授かる物ゆえ、今どう足掻いてもどうにもできん。
――じゃが人望は違う。人を信じ、人を愛せば、自ずと人は着いて来てくれる物じゃ。
わしは今までそち達家臣を、所詮は駒、言う通りになる下部程度に考えていたが、それは違ったのじゃ。
――そち達は、わしを信じて共に戦ってくれる大切な友、仲間じゃ。わしを信じてくれているゆえ、父上のようにと期待されるのも当然じゃ。」
「……。」
語る龍興に全く違う雰囲気を感じ、思わず飲み込まれてしまう。以前とひと味違う所の騒ぎでは無い。
もはや別人、全く違う人間なのではないかと思えるほどであったのだ。
「わしはそち達の期待には応えられぬかも知れぬ。だがわしはそち達を信じ、また民を守るために心を入れ替える。
――共に……、戦ってくれるか?弘就。」
龍興の言葉で、胸に石をぶつけられたような衝撃を受ける弘就、物も言えぬ感動を覚えて声が出ない。
口だけが先行して動いてしまい、ぱくぱくと動くだけ。
「――戦ってくれるか?」
「――は……。」
ようやく出た言葉は、殆ど声になっていなかったが、龍興が優しく微笑んだ事で、安心し、それと同時にカッと目頭が熱くなった――。
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