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「安藤守就、参上してございます。こたびは、殿を諫めるためにと某が提言した策でございますれば、半兵衛の命はお助け下され。」
数日後、稲葉山に登城した守就と半兵衛は、どちらもいわゆる“死装束”と呼ばれる白色の衣を身に纏っていた。
そして平伏した二人は、必死にお互いの命だけは助けて貰おうと、責任を自分に押しつけていたのだ。
「――たわけ。守就、半兵衛。こたびの行いは、すべてわしを思ってのこと。何故そち達が死ぬ事になるのじゃ。
わしはそち達のおかげで目が覚めた。今日は礼を言うために来て貰ったのじゃ。」
という余りにも予想だにしていなかった龍興の発言に、思わず素頓狂な表情になり、お互いの顔を見合わせた。
そして龍興の顔を再び見てみる。やはり柔らかい表情でこちらを見つめており、明らかに今までとは違うようだ。
「――殿?何かおかしな物でもお食べになりましたか?」
不思議が積もった守就は、無礼ながら思わずそう聞いてしまった。だが龍興はそれを大笑いして笑い飛ばし、堂々と立ち上がった。
そして二人に歩み寄り、肩に手を置いた。
「わしは大切な事に気がついた。
すべてそち達のおかげじゃ。ありがとう、守就、半兵衛。」
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