【暗黒の暖】①

2/2
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
貴方様のお側に いられるならば どんな仕打ちでも 喜んでお受けします。 貴方様に 愛の証を貰えなくとも この痛みこそ 私の生きる意味として 価値あるものだから…。 『ベラ……用意は出来たか?』 『はぃ!ご主人様』 夜が明ける前に 薄暗い荒れ果てた町並みを 二人は足速に横切る 闇に支配され、月明かりだけが静かに大地を照らし、異様な空気が漂っている。 暗黙に支配された世界に 燈す光りを満足そうに見上げるご主人様の後姿を 私はただ目で追っていた。 『ベラ…………俺様は間違った選択はしておらぬ』 『はぃご主人様……心は一つでございます。』 『そうか………。』 マントを翻す貴方様の後姿に この腕を延ばせば触れられる距離に居ながらも、いつもこの距離が私に邪魔をする。 貴方様の言葉や仕草が何時も私の心を支配し、この痛みを私は受け入れる…。 腕の闇の印が肌の上で熱く光照る瞬間に、貴方様の温もりを強く感じるのに…。 この痛みは 強く 熱く 激しく 私の胸の奥にある空間を支配し、鋭い剣となって私を突き刺す凶器と化す…。 この激しい痛みを 愛おしむように 抱いているのに……。 貴方様には届かないのですね? 瓦礫と化した建物の隙間を歩くご主人様の後姿を眺めながら 一筋の熱いものが頬を伝って流れ落ちて消えた…。 『ベラ……!お前だけに俺様の秘密を授けよう』 『はぃご主人様!有り難き幸せ』 貴方様から受け取ったこのゴブレットを、貴方様からの愛の証として大切にお守りします…。 そうする事で私の生きる価値が生まれる気がしたから…。 『ベラ………俺様に何かあったとしたら………お前は助けに来てくれるか?』 『はぃ………私の命は、ご主人様と一つでございます、どんな事が合っても』 『そうか………。』 『はぃ!嘘偽りなく………。』 一瞬、貴方様と私の気持ちが通じた気がした、たとえそれが幻だったとしても構わない。 貴方様の信頼を勝ち取る事の全てが、私の生き甲斐であり、私の存在価値として意味のあるものだから…。 私は貴方様と共に逝く覚悟は、既に出来ています。 End
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!