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お前が側に
いてくれるならば
俺様の価値など
本当はどうでも良いこと。
お前に
愛の証を授ける事が
出来るなら
どんなに楽で
幸福な事か…。
歪んだ愛の定めを
受け入れるだろうか?
『ベラ……用意は出来たか?』
『はぃ!ご主人様』
夜が明ける前に
薄暗い荒れ果てた町並みを
二人は足速に横切る
闇に支配され、月明かりだけが静かに大地を照らし、異様な空気が漂っている。
この暗黙に支配された世界は、
お前と俺にはとても相応しい
『ベラ…………俺様は間違った選択はしておらぬ』
『はぃご主人様……心は一つでございます。』
『そうか………。』
息を切らしながら真っ直ぐ見据えるお前を、振り向き様に強く抱きしめる事が出来たなら…どんなにこの痛みは癒されるだろうか。
お前の真っ直ぐな忠誠心は、俺様への恐怖心から来るものではなく、ただ素直な女の愛その物だと分かっているのに……。
歪んだ俺様の愛の証を腕に刻み……お前は腕の闇の印を愛おしむように眺める。
この愛は
強く
熱く
激しく
俺様の幼き日々の空白を
虚しさを
苛立ちを
そして
限り無く続くであろう悲しみの全てを一瞬で溶かして行く。
ほんの少しだけ
母親の如く抱きしめる。
だが、もう……遅いのだベラ!
瓦礫と化した建物のように俺様の魂は切り裂かれてしまったのだ…。
この魂は、お前のような純粋な女の魂が触れた瞬間に、紛れも無く崩れ落ちてしまう。
許してくれベラ!
お前の魂と交わる勇気のない俺様を…。
『ベラ……!お前だけに俺様の秘密を授けよう』
『はぃご主人様!有り難き幸せ』
だから、お前には何も告げずに俺様の分身である魂の一部を託そう…。
そうする事でしか俺様の愛をお前に伝える事が出来ないのなら…。
この空白の冷たい魂に、お前の愛を継ぎ足して生きる事でしか、自分を保つ事が出来ない俺様を笑うがいぃ……。
そして、何時の日かお前は俺様を裏切り遠くへ行ってしまうだろう………。
その時でも分身と共にお前と一緒に居られるならば。
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