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『グラバー、握手してくれたまえ…』
ニックはそう言い、右手を出した。
『え?』
『私も男だ、いさぎよく負けを認める。
完敗だ、どうかエレナを幸せにしてやってくれ』
『な…なんだぁ!?』
ニックは驚くグラバーの手を、勝手に握り…
悠然とした風情で、その場を立ち去った。
こうしてグラバーは、エレナの婚約者となり…
この噂は街中に広まった。
そんな折り…
街に、長身で…黒ずくめ衣装をまとった男が現れた。
彼はあちこちでグラバーの事を聞いて回っていた。
……………………
彼はとある酒場に現れて、店の主人にグラバーの事を聞いた。
『亭主、こんな男を知らないか?』
彼はグラバーの特徴を、事細かにあげ…店主に聞いた。
『ああ、その方でしたら…街で有名な実業家の娘さんに助けられて…そこのお屋敷で暮らすうちに、とうとう娘さんのハートを射止めちまったってぇ…評判です』
『何?そいつは本当か?亭主?』
気色ばむ男の迫力に押され…
店主はこくりと頷いた。
『え…ええ…本当ですとも、街中で噂になってますよ』
『そうか…世話になったな』
男はそう言って、店を出た。
「そうか…グラバー、貴様は街に居たのか…」
男の正体は…変形したウェア・ウルフだった。
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