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果てしない、ともすれば呑み込まれてしまいそうな程の暗闇の中で、遠くの電灯だけが小さな光を放っていた。
僕は橋の手すりに腰掛けて、ワケもなくただゆらゆらと揺れる川の水面を見つめている。
多分、今の時刻は午前3時前後。
十分に真夜中と言える時間帯だ。
こんな時間にこの古びた橋を渡る人なんて、まずいない。
いたとして、自殺志願の放浪者か、道に迷った酔っ払い。
それ以外では確実に僕くらいしかいないだろう。
だから
僕はこの場所が一番好きだった。
別にそこまで一人が好きなワケじゃない。人並みに友達だっているし、そこまで暗い奴でもないつもりだ。
でも、誰しも一人になりたい時がある。
そんな時、僕は必ずここに来る。
落ち着くからだ。この暗さと、人気の無さが。
何となく、世界には自分しかいないんじゃないだろうか、なんて気になる。
橋の上に吹く夜風が、酷く心地良い。
鈴虫の鳴き声しか聞こえない。
リンリン、軽快に。まるで演奏会でもしているかのように。
この世界にはもしかしたら、僕と鈴虫しかいないのではないだろうか、なんて気がした。
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