第1章 招待状 ~僕と電波のいい旅夢気分~

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  しばらくして気がつくと、空が大分明るんで来て太陽が少し顔を出していた。 おはよう、僕にそう言うかのように太陽はにっこり笑う。 とても眩しい笑顔で、僕は思わず目が眩んでしまった。 さっきまでの時間がまるで嘘のように活気を取り戻している街。 新聞配達のスクーターの音、電線の上の小鳥達のさえずり。とても賑やか。楽しそう。 歩いて行く度に街はどんどん賑やかになる。 ランドセルを背負った子供の笑い声や、携帯をいじりながら歩く高校生。散歩中の犬達がじゃれあい、猫は気楽な鳴き声を上げる。 何故か、少し寂しくなった。 さっきまで僕と鈴虫しかいなかった世界に、こんなにも生命が増えて。 少し、ほんの少しだけだけど、煩いなと思った。 もう、鈴虫の鳴き声は聞こえて来ない。 街は今日も元気に動き始めていた。  
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