何だ?

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「疲れてるのよ。今日は寝たら」 いやいや こんな状況で寝れるわけがない。 無理だと言おうとした瞬間女は微笑んだ。 『母親の顔』だと 何も知らないくせに勝手に思う俺は何様だと思う。 ほんと何様だ?色んな意味で パタンと軽々しい音でドアが閉まる。 白い世界。 白いベッド 白い壁 白いタンス 机だけが黒かった。 「……何か無ぇかな?」 "俺"の手掛かりを探す。 俺の部屋なんだろうが、結局は知らないやつの部屋だ。 「これ、犯罪だろ」 ふと思ったことが口に出る。 犯罪じゃない。 何も悪いことはしてない。 多分。 ……苛々してきた。 「おっ?日記じゃん!!」 DIARYと書かれた分厚い本のようなノートを取り出す。 ……? 何で開かねえの? 日記の裏には鍵穴 鍵穴? 鍵がいんの? 「わかんねー…」 意味不明なことだらけの中、呟いてみても何も変わらなかった。 それから俺はタンスの中やベッドの下などとりあえず部屋にあるものを全て把握する。 本棚には某人気少年漫画が全巻あった。 その時俺は疑問に思った。 何でこういうことだけわかるんだ? 俺のことやさっきの女のこと、この場所。 それらは分からないのに漫画のタイトルや食い方は分かる。 俺が記憶喪失者だとして抜け落ちた記憶はなんだ? 俺はたった今出来た存在なら赤子同然で言葉も分からないんじゃないのか? それとも俺は元々居なかった? たった今出来た存在で何らかの理由があって常識的なことしか知らない脳で。 あの女の脳の中に俺という記憶がたった今出来た? そして俺が考えているもう一つ可能性。 "この世界はたった今出来た"という可能性。 俺がいるこの世界の全ての人間の今までの記憶もたった今出来たという可能性だ。 「……」 そこまで思考を巡らせたところで頭が痛くなってきた。 もう寝てしまおう。 起きたら俺は俺になってるかもしれない。 起きたら俺はこの記憶は忘れて普通にまた過ごしていくんだろう。 そして今の俺がいたことは世界中で誰も知らない。 はは… 何言ってんだか じゃあ…おやすみ。 俺。
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