髪どめ

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母親と金髪は上手くやっていくだろう。 そう思って眠りについた。 眠りについたというか… 布団の中に入った。 そして目を閉じた。 その瞬間。 「愛してる…」 ………幻聴だろう。 そう思いたいのだが 何かがおかしい。 胸の辺りが重い。 何だか布団の香りも変わった。 「愛してる…だから目を… 目を開けてくれよ」 背後から男の声。 ちょっと待て。 意味が分からないとしか言いようが無いぞ? 俺は迷った末目を開けた。 「愛子!!愛子……!! 目を覚ましてくれたんだね……!!!!」 目の前で号泣する男。 俺は視線を泳がせる。 「愛子……!!愛してる……」 男に抱きしめられる。 「ちょっと、どけ」 俺はそう言って男を殴り飛ばした。 男は尻餅をつき目をぱちくりさせている。 そして俺はベッドから降りようとした。 「っ!!!」 俺の足が…… 俺の足が 細長い。 女みたいに。 っていうか 服を着ていない。 俺は汗をたらりと流し自分の胸元を見つめる。 「!!!!!!」 胸が。 俺の胸元に女の胸がついていた。 普通の男は興奮するのかしないのか知らないが俺はこんなのどうでもいい。 「服持ってこいよ!!! 何で裸なんだよ!」 俺が男にそう叫ぶと男は慌てた様子でわたわたと四つん這いで部屋から出ていった。 その時俺の視界に入ったもの。 茶色い髪の毛。 よく見ると腰まである。 さっきまで生えていた感覚なんてなかったのに。 何だ? 女になってるのか?俺は。 …俺は記憶喪失者だと思っていたのに。 違うのか? 何が起こっているんだ? 「ふ、服持ってきたよ!!!」 男は鼻息荒く言った。 俺はそれを着る。 変態の気分だ。 「愛子……殴って悪かったよ… だから機嫌を直してくれよ」 「黙れ」 男は悲しそうに俯く。 そして泣き出した。 「愛子……なぜそんなことを言うんだよ…… 髪どめのことはあんなに謝ったじゃないか………」 うるさい。 睨むと男は黙る。 若干可哀相だが今は黙ってて欲しい。 俺は今自分の置かれている状況を理解するのに必死なんだよ。 「愛してるのに………」 男はすねたように言った。
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