髪どめ

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ちんぷんかんぷん。 そんな顔の男。 「言ってる意味は分かるよ。 でも、いまいち信用できない」 じっと俺を見つめる男。 「こんな嘘ついて何になるんだよ」 「嘘をつく奴は大体そう言うじゃないか」 いや、もっと単純になってくれよ… 「どうしたら、信用してくれんだよ。」 「わからない」 「何だよそれ……」 俺はため息をつき前の俺の日記を思い出していた。 あの日記の内容が理由もなく気になる。 あの日記の内容を見ればきっと俺の状況は変わっていた、そんな気さえする。 ……もしかして俺は誰かに操られている? 誰かの力によって色んな奴の意識に入り込んでいる? 何のために、だ? 「愛子」 「俺は愛子じゃねえよ」 「名前は?」 「……わかんねえ」 「じゃあ愛子でいいじゃないか」 「………。」 誰かに操られているなら"誰か"って誰だ? 可能性が頭の中で溢れ返りその度100の疑問が湧く。 「愛子、とりあえず何か食べようじゃないか」 「…ああ」 リビングにいく。 歩く度長い髪が揺れる。 「なあ、あんた名前は?」 「俺の名前は葉山だ」 葉山。 葉山と名乗る男は俺の目の前にカレーを差し出した。 「またかよ………」 渋々食べながら俺は葉山に話しかける。 どうでもいいなりに気になる発言があったからだ。 「何で、ああいう状況になってんだ?」 「え?」 「葉山が…愛子、に謝ってた状況」 ああ…、と葉山は呟きカレーを一口食べる。 一口がめちゃめちゃ少ない。 「俺が愛子の髪どめを無くしてしまったんだ。 その髪どめは愛子の元恋人が愛子にプレゼントした物だった。 俺は愛子がその髪どめをつけてるのが気に食わなくて隠した。 そして愛子は昨日髪どめを探していた。 愛子はいくら探しても無いと騒ぎ立てて前から髪どめのこと良く思っていない俺を疑った。 俺は少し意地悪をするつもりで隠しただけだった。 返すつもりで、いた…… でも俺は髪どめを隠した場所を忘れていたんだ。 隠したことさえ愛子が髪どめを探してから思い出した。」 なるほど… 「まあ、愛子もそれじゃあ怒るだろうな」 男は頷く。
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