一難去ってまた一難

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《今回の任務は極秘中の極秘である。学術都市エルテルからの要請だ》 大きなテーブルを前にしてテルミットの父親、センド・ハイデルバードが語り始めた。 名家ハイデルバードは現在のエデン王国を設立したシンクレア家代々の付き人の一族である。 ハイデルバード家の人間はその世代ごとにシンクレア家にマンツーマンで忠誠を誓う。 誓った忠誠は誰も崩すことができない。 センドは現国王に、テルミットはレノアに絶対の忠誠を誓っている。 例え異性でもこの関係は成り立つのである。 テーブルの周りの椅子に腰をかけているのはエデン国の重役が多く、明らかにフェイトは場違いであった。 センドの背後のスクリーンにエデン国の地図が映し出された。 《首都アルデヒドから北西に位置しているエルテルの研究作品が逃亡した模様だ。今回の任務が極秘なのはそこにある》 センドはレーザーポインターである都市を照らした。 学術都市エルテル。 エデンの頭脳派たちの楽園と言われる都市で現代の科学技術は殆んどがそこが出発点である。 他にもディバインの研究も盛んで、昔はフェイトもよく検査を受けていた馴染みの都市だった。 《逃げ出したのは5体の合成獣、キメラだ》 キメラ、その単語が出た瞬間作戦本部室はざわつき始めた。 重役たちにも焦りの表情が見える。 「バカな!キメラの研究は数年前に禁止にしたはずだ!」 「即刻絞首刑が適用されますぞ!」 「その研究員を連れてこい!」 数々の意見が飛び交う中、センドは至って平静を保っていた。 (流石テルミットの親父だ。周りの奴等とは纏ってる空気が違う) これにはフェイトも敬意の念を抱かずにはいられなかった。
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