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「成る程な」
フェイトはにこやかに笑った。
実際の心境としてはレノアの勝手極まりない行動に愛想をつかしていたのだが。
しかしレノアがそれを知っているはずもない。
当のレノアはフェイトが今日始めて笑ったことで喜んでいた。
「それでは姫様、さっさと出てけ」
にこやかが急変、怒りの形相に変わったフェイトはレノアの手を引っ張って扉まで来た。
未だ扉はギシギシと音を立てて十数回目の粉砕へと進んでいる。
「さぁさぁ扉が壊れる前に出てけ出てけ」
勢いよく扉を開く。
軽い抵抗があったが構わず扉を開いた。
「ぐあっ!」
汚い声が響いたが取り敢えず無視して、レノアを部屋の外へ出した。
「鍵出して。スペアキー」
フェイトは目の前に手を広げて出した。
それに従いレノアはその手にスペアキーを乗せる。
「確かこれ銀で出来てんだったな?」
フェイトは確認をとる。
それにレノアは首を縦に振って答えた。
「王水、濃硝酸、熱濃硫酸。どれに溶かすかな」
そう言ってフェイトは扉をバタンと閉めた。
ポカァンと扉の前でレノアは立ち尽くしていた。
取り敢えず何があったかを考えるために顎に人差し指を当てた。
「…………鍵取られてしまいました!」
漸く事態に気付いたレノアは声をあげる。
「ぬぅぅ……フェイトめ。後で見ていろ」
床に寝そべりながらじいが言った。
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