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夏休み初日。
少年が少女と向き合っていた。
真夏の太陽が照りつける屋外。蝉がミンミン鳴いていてかなり五月蝿い。暑さが3割くらい増していそうだ。
場所は学校の射場。主にアーチェリー部が使っている。
そんな場所で少女と少年――山口崇――が何をやっていたのかというと……。
「えーっと、山口……崇君……かな?」
「はい」
「入部希望…かな?」
「はい、よろしくお願いします」
……といった風に、俺は夏休みという中途半端な時期に部活動に所属することにした。
部活に所属するのは何だか面倒で、春は入部届をださなかった。
が、気まぐれと、とある不純な理由から、部活をすることにした。
「んと……私がアーチェリー部部長の三谷友紀です……わかんないことがあったら言って……ください」
まぁ……不純な動機ってのが彼女――友紀先輩――への恋心だったりするわけで……。
あー……俺、どうして惚れちゃったりなんかしたんだろうな……。
―――多分、入学式のときだろう。"友紀"と呼ばれていた上級生の女子。
気になってしまって、いろいろ聞いて回っていたら……まぁ……気づいてしまったわけですよ。
あぁ……この人のこと、好きなんだ……って。
そして、俺は入部届を出した。
アーチェリー部に直接出向いて、友紀先輩に入部する事を告げた。
友紀先輩は、俺に軽く自己紹介をしたあとにジャージ姿のままどこかに走り去っていった。
……忙しいときに声をかけてしまったようだ。
少し反省しながら周りを見渡す。
周りでは、先輩や俺よりも早く入部した奴らが練習している。
やたらと空が青く感じた。
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