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とにかく、変な後輩のことは置いといて。
演劇の台本にもなる原稿を、みんなが私に期待してくれているのに、原稿は進まない。
また、ため息をつく。
イライラが吹っ飛んで、逆に悲しくなってくる。
なんで私はダメなんだろう。……誰かに誘われた訳ではなく、自分からやりたいと立候補して……なのに納得のいく物が書けない。
……、……あ、ヤバい。涙がでてきちゃったよ。ガキか私は。
はは……と、自分を笑いながら涙を拭こうと頭をあげようとしたそのとき、頭に違和感。
頭をぽんぽんと軽く叩いた後にぐしゃぐしゃと髪を乱す。
……、……撫でられた?
2人きりの部室。
何故か時が止まってしまったかのような感覚。
「……へ?……た、崇?」
「泣かんでくださいよー……」
「……あ……うん、ごめんなさい」
クスリ、と笑いながら頭を撫でる後輩1号。頭の上の手のせいで崇の表情は分からないが、多分微笑んでいるんだろう。
ついうっかり素直に謝ってしまった。
……なんか、まだ撫でてるし。
「俺、演劇とか、そういうのは分かりませんけど……愚痴くらいなら聞きますよ?」
「うん……」
「だから、泣かんでください」
最後にぐしゃぐしゃと、少し乱暴に頭を撫でてから崇は手を放した。
……なんだ、コイツ。
私は、崇の顔を見ることができない。
頭の上に、もう手はないのに……。
なんで、こんなにドキドキしてるんだ?私の心臓。
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