A supposition

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3月某日の午後。 ありがちなシチュエーション。桜の木の下に2人の男女の姿。 少女の手には卒業証書。 少年はただ少女を見つめ、少女は地面を見ながら卒業証書を握りしめる。 沈黙が流れる。 しかし、その沈黙を打ち破ったのは下を向いていた少女だった。 「例えば、の話だけど」 「例えば?」 少女の言葉を真似するように少年が問いかける。少年の言葉に頷いて、少女は続ける。 「そう、例えばの話。……私が生まれたのが3月24日じゃなくて、4月2日以降だったら、って話」 「……4月……ていうか、俺の話をちゃんと聞いてくれていましたか?」 「聞いてるよ……だから、その答えを今から語るところ。崇こそ、ちゃんと聞きなさいよ」 「……はい」 少年は少女の指摘に黙り込む。 「崇みたいに、とりあえず4月に私が生まれたならさ、こんな事にはならなかったと思うんだよ」 「……友紀先輩」 「崇が3月生まれだったらでも……こんな想いはしなかったんだよね?」 2人の間に風が吹く。 少女の手には卒業証書。 少年も、少女も、どこか悔しそうに顔を歪めていた。
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