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「ん……うお!!なんで死体がある?」
正也はあの後光に包まれて、眩しさの余り眼を閉じていたが桜の合図で眼を開けると。
白濁した目を見開いて腹から大量に流血している。和装の骸が目に入り思わず尻餅をついた。
そうこの時代は、激動の時代幕末。
外人を撤廃し古き日本を守ろうとした侍と、彼らの力を借りて新時代を切り開きたい侍との戦いが繰り広げた時代だった。
この土地も例外ではない。
「この時、私は悲しかった…私達の下で仲良くしていた人間がこうなるなんて。」
桜は俯いて悲しそうに目を細める。
硝煙と鉄の臭いがキツくなり、侍達の戦う音だけが流れた。
「大丈夫なのか?」
「へ?」
正也は重たい口を開いて桜に問いた。
「俺ら流れ弾とか当たらねぇ?」
「大丈夫だ、ここはコイツの記憶の中にいるだけだから…時自体移動してない。」
「そうか…で?俺に何をして欲しいワケ?」
正也は先程思っていた事をぶつける。
「ついてこい。」
桜は、正也に指示し歩き出した。
正也も素直に従い後を追う。
(くそ…助けられねぇのか。)
正也は辺りを見渡してそう思う。
負傷した侍達が地を這い、呻き嘆き苦しんでいる光景を目にすると誰だって同情してしまう。しかもテレビのように第三者的に見ているのではなく、現場にいて第三者的に見ているとは話が全然違う。
「後に"嘆キ路"と呼ばれるのは、死を目の当たりにした人間達が嘆き苦しんだ事からきているらしい。」
桜は、朱に染まった地面を踏みしめて歩きながら説明する。
「そうか…。」
正也は、短く返事をした。
刀とピストル、あきらかに勝負は見えている。
「着いたぞ。」
桜は柔らかな陽の様に微笑み、正也は俯いていた顔をゆっくりと上げる、着いた場所は一本の立派な葉桜だった。
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