世界を救うために

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金属バットにしようか、鉄パイプがいいだろうかと悩んでいたとき、ドア越しに山田先生がポツリと言った。  私の意識は山田先生の言葉に呼び込まれ、現実に引き戻される。  「敵がウジャウジャいる場所さ」  「うそだ。先生は何で敵を見つけられるの?私だって見分けられるようになるまでに3年2ヶ月と、通信教育を必要としたのに!」  「先生も鈴木さんと同じ頃は、世界の敵と戦っていたんだ。だから見分けられるんだよね。今は引退したので闘いは鈴木さんみたいな子達に任せているけどね」  「……ほんとうなの?それはどこなの?」  私の問いに山田先生は一呼吸置いてゆっくりと答えた。  「それはね、学校だよ」  翌日から私は2年も通っていなかった学校に通い始めた。  さすがに金属バットや鉄パイプを学校に持ち込む事は出来なかったので諦めた。  知っている顔も何人かいたけど、ほとんどが知らない人ばかりのクラスに山田先生に連れられて入り、半年遅れの自己紹介をしたときに私のアンテナが反応した。  私が地球の平和を守るために戦っていると気が付いたのか、ヒソヒソと私について話し合う姿が確認できたのだ。  しばらくは様子を見て、尻尾を出したらすぐさま、必ず殲滅しようと思う。  だけど、特に襲撃される事もなく、時は流れ、私は中学を卒業する事になった。  卒業式を終えて、教室に戻り、山田先生の最後の話を聞き、解散となった。  思えば、山田先生が言ったほど、敵はウジャウジャしていなくて、2~3回ほど、絡んできた雑魚を血祭りにしたくらいで、後は抗争と言えるほどの闘いは無かった。  クラスメイトにしてみれば、奇妙な言動の私に近づかなくなったし、私も群れるのは嫌いだったので近づきもしなかった。  唯一と言って良いのは、移動教室など、出席番号順に座るときなどに、私の隣に座る福知山という男子生徒だけは良く話しかけてきた。  「鈴木さんってさ、世界の敵と戦ってるんだろ?今まで何人くらい倒したの?」  「敵ってさ、どうやって見分けるの?」  ……などなど。  今日もまた、福知山君が帰り支度している私に近づいてきた。  「中学は今日でお終いだけど、高校も一緒だよね」  そう言って、福知山君は笑う。
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