胸の鐘の音

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そしてケーキを食べ終わった後、お互いに別々に風呂に入る。俺が先に入って、恥のないように風呂の中の汚れとかをブラシで擦っておいた。少し自己満足に浸る。 適当にシャワーを済ませ、今度は虎南ちゃんが風呂に入った。 虎南ちゃんが風呂に入ったのを確認して、俺は台所で水をコップ一杯飲む。 そして、あまり使うことが少ない和室へと足を運ぶ。仏壇に祈るわけでなくて、虎南ちゃん用の布団を敷くためだ。さすがに同じ部屋だとマズイからな。俺は全然構わないんだが。 布団がしまってある襖を開け、おぼつかなく慣れない手つきで布団を敷く。掛け布団にカバーをしたり、寒いから毛布を敷いたり、何かと面倒だ。 俺が枕に枕カバーを巻いている頃、 有『コジくーん』 こちらに近付いてくる足音が止まったと同時に声が届く。ふと見ると、虎南ちゃんが和室の入り口に立っていた。 首にタオルがかけてあり、髪が濡れて顔が少し火照っている。 俺は虎南ちゃんに貸したスウェットに目線を送りながら、 虎『着替え、それでよかった?』 有『うん。ピッタリだよ♪』 そして俺の行動を不思議そうに眺めて、 有『何してるの?』 首を軽く傾げて問う。 虎『虎南ちゃん用の布団だよ。ここで寝れる?』 俺の言葉を聞いた虎南ちゃんの表情が少し曇ったのを確認できたのは、和室の入り口と和室の中心付近という、距離が近かったからである。だが、一瞬こうなる結果を脳裏をよぎった自分に嫌気がさした。 虎『…どうしたの?』 急に俯いて、畳の線を数えるように、 有『コジくんと…一緒がいい…』 虎『……へ?』 この間抜けな声は信じたくないが俺だ。 高校のクソ真面目数学教師が1+1の答えを3と言った時ほどの疑問が湧く。誰だって不意をつかれたら驚くさ。俺はてっきり、一緒じゃなくて同じ部屋みたいなそういう事だと思っていたから。 心の中で一呼吸置き、 虎『一緒って…一緒に…?』 可愛げに、うん。と頷く。 俺に断る術なんて、脳内旅行を何周しても見つからないので、一応受諾しておいた。 そして布団敷きに手を止めていた俺にてくてくと近付き、 有『早く、歯磨いて布団入ろっ』 誘っているのか?と疑いたくなる程の甘え口調で、俺の腕辺りの服の袖を可愛く掴みながら言った。 少し顔を赤くして言った姿は、ただただ可愛いのみであった。  
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