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それからすぐに
雨の中に立つ彼を
見つけた。
分厚めの服を
着ていても
寒いと感じる程の
ご時世に彼は"異世界"に
存在しているかの如く
そこに立っていた。
道行く人は彼を見て
笑い、貶し、憐れんだ。
だけど、誰一人
その男に傘を渡す者は
いなかった。
「…あと、5分しても
彼があそこに
いたなら、傘を
渡しに行こう…」
無機質なビル街の
一角に構えた
撥音の勤める会社。
窓際にデスクを
置かれた撥音は
あそこに立つ彼に
小さな約束をした。
ーあと、5分で
アナタを助けますー
そんな馬鹿みたいな
一方方向の約束。
だけど、それが
今後の撥音を
大きく揺るがすなんて
思ってもいなかった
撥音は少し奮発して
購入した腕時計を
しきりに見ていた。
運命の5分後を
示すその針を…
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