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弓塚円香(ユミヅカ マドカ)は叔父の顔をよく覚えていない。
子供の頃はよく童心がてら 遊びに連れてってもらったり、親に内緒でちょっと高めのオモチャをねだっていたりした。
思い返しても、円香は叔父にとって少しやんちゃな女の子で、叔父は円香にとっていつだって優しい家族の一人だった。
ただ、いつだって、
円香が彼を見上げれば、
そこには虚ろな眼をした叔父の姿があった。
彼は何処を視ていたのだろう。
彼は何を思っていたのだろう。
子供だった円香にそれを知る術などなく、
そして今、
彼の墓を見下ろす彼女は、
彼の瞳の理由を知る時間を失ってしまったことにようやく気付いた。
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