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粛々と葬儀は進む、不思議と涙は出てこなかった。
お父さんとお母さんが亡くなった時と同じ、何処か遠くに出掛けてしまう家族を見送るような心境だった。
ただ、叔父さんはやり残したことはないのかなと、今となっては意味の無さそうなことを考えていた。
「円香ちゃん、辛くない?」
「はい、大丈夫ですよマリさん。
わざわざ来てくださってありがとうございます」
葬儀が終り息苦しい空気から抜け出した円香の後ろから、白い服の女性が声をかける。
「ゴメンね、喪主なんか任せちゃって。あの人、貴女以外に親族がいなくって」
「大丈夫ですよ、マリさんやイツキさん達が手伝ってくれましたし。
それに、私だってもう大学生なんですよ」
拗ねたような円香に笑顔に、マリもまた微笑みを浮かべる。
「フフ、そうだったわね。じゃあ後のことは私に任せて、円香ちゃんはもう帰りなさい」
「え、でもこれから…」
「これから先は大人のお仕事。会場直したりお偉いさんとお話したり、帰りに飲み屋で一夜明かしたり。
だから、貴女はもうお家に帰って休みなさい」
「マリさんってばまた子供扱いして…私だってお酒飲めるもん」
「あらあら、じゃあ楽しみにしてるわね。とりあえず…そのお楽しみはまた今度、ね?」
「…はぁい」
あやすような彼女の言葉に円香は諦めたようにうなだれる。
――結局のところ、私はまだまだ子供のままらしい。
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