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『―――』
――夢の中で…呼ばれた、気がした。
目を明ける。
それに連動して意識が、耳が、鼻が、眠る直前までの感覚を取り戻す。
そうして気づいた。
私の眼前に広がる世界の異様さに。
絵の具を溢してしまったように、黒一色に塗りつぶされた闇の空。
私の視界を照らすのは、その闇空を照らすかのような黒い太陽。その太陽もまた、辺りの闇空を上回る暗黒さを放っていた。
辺りに広がるのは、四角い岩石や醜悪な石像が無秩序に組み上げられた古代都市のような世界。
岩と岩の隙間から這い出る緑色の粘液が、無機質な空間に生物らしさを伴わせ、生理的な嫌悪感を誘わせる。
要塞のように積み立てられたそれらは不安定かつ物理的に不可能なカタチで、何処か冒涜的な角度を帯びて私の視界に入り込んでくる。
歩こうとする。
だがその度に、地面と空が同時に歪む。
そして、私の躰もグニャリと、
まるで粘土のように不定形、
あり得ない歪曲をワタシにもたらす
あり得ない世界をワタシに突きつける
あり得ない虚構をワタシにまとわせる
――まるで、今まで信じてきた私の過去が、人生が、
どうでもいいものと嘲笑うかのように、
醒めてほしい。
こんな悪夢にもならない夢。見続けるだけでおかしくなりそうだった。
不意に、私の中から信じられない感覚がこみあげる。
まるでこの世界が懐かしく感じるような、
まるで、私の中のナニカがこの世界を受け入れているような……
『――■■■■』
その時、私ははっきりと聞いた。
理解してはいけない声が、闇の世界に響き渡るのを、
そして、次の瞬間、
私はその言葉を理解してしまった。
世界を終わらせる。
悪夢のような喚び声を…
……くとぅるふ、ふたぐん
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