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「――ッ!!」
無理矢理意識を引き剥がすように、私の意識は覚醒した。
肩で激しく息をして、指の先まで寝汗でぐっしょりだった。
「…夢、か」
安心して大きく息をする。
背筋が凍るような感覚は、まだ私の中からは消えていない。
でも夢は終わった。
あの身の毛のよだつような想いもしなくて済む。
「まだ夜だったんだ」
近くにあった目覚まし時計は、まだ二時を過ぎたばかりだ。
また眠るのは少し恐いけど、明日もやることがあるから徹夜は辛い。
「……?」
フワリ と夜風が肌を薙ぐのを感じた。
カーテンが煽られたようにほんの少しだけ捲れる。
確かに窓は閉めた筈なのに。
言い難い違和感が胸元から込み上げる。
同時に想起される、先の夢の中の世界。
「…ッ…んッ、やだ…!」
肌が寒い。
息が詰まる。
どうして私は夢なんかで、今までにないほどの恐怖を覚えるのだろう…。
眠ってしまおう。
始めは大変だけど、次に目が覚めた時は全てを忘れている。
思い直し、シーツに手をかける。
「―――え?」
不意に視界に何かが写る。
真っ暗な部屋、
私のベッドのすぐ横
私の目と鼻の先、
すぐ隣の黒い影
黒衣の人型
アリエナイ
真っ暗な中佇む闇
歪に吊り上がる、歯
睨ミツケル紅蓮ノ瞳
ヌラヌラと妖シク蠢イテ
その双眼と…はっきりと目が合った
おぞましい程ノ狂喜ヲ秘メタ顎ガニタリと吊リ上ガリ…
ワタシノスグメノマエニ…
ヨウヤク…ミツケタ
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