4人が本棚に入れています
本棚に追加
近頃、僕のペースがおかしい…
彼と親しくなったから。
だと思う。
彼の名は、吉田誠司。
彼がクラスでの雑談中、
“天狗を見た”と言って
一部の友人に囃し立てられ、
勢いで天狗の写メールを撮ってくるという出来事があってから親しく話すようになった。
と、彼は思っている。
間違いではないが、
僕はそれよりもずっと前から彼の事を知っていた。
小学校5年生の頃、
母がひいきにしている美容室に迎えに行った時、
担当の春子さんが、
「やよいさんのお子さんも小5?
あら、ウチの誠司と同じ歳なの!しっかりしてるわね~」
という母との共通点が分かった後、
僕が次に母を迎えに行った時、
“ウチの誠司”くんがお店に来ていたのだった。
「ほら、昨日話した文章くん。しっかりしてるでしょう?」
そんな紹介されても困る。
大抵、自分の親が他人の子供を褒めたら嫌な気分になるものだ。
でも、“ウチの誠司”くんは違っていた。
「フミアキくんって言うの?
オレ誠司!よろしくぅ~
オレと同じ小5?どこの小学校?」
と、くったくなく笑って矢継ぎ早に質問攻めにあった。
「ゴメンね。うるさい子で」
と、すまなそうに春子さんは言っていたが、“ウチの誠司”くんを見る目はやさしくあたたかだった。
僕はこのとき、
今まで味わった事のない感情になった。
最初のコメントを投稿しよう!