夢の中の“友達”

2/11
前へ
/74ページ
次へ
二人だけの秘密基地。 河原の土手の廃墟と化したプレハブ小屋。 「うわっ!汚い」 そう言いながら二人で発見した事がうれしくてずっと笑っていた。 「明日、ここをピッカピカに掃除しよう!」 「うん!ピッカピカにソウジ!」 「ピカピカに掃除して、僕らの秘密基地にしようよ」 「うん。ヒミツキチ。ヒミツキチ」 亮治は同じアパートに住んでいる一こ下の子供だった。 幼稚園のハズだが通ってはいない。 「お母ちゃん大変だからいいんだ。ボク、行かない」 亮治のお母さんは僕の母と同じお店で働いている。 かわいそう。と言う言葉が嫌いな母が 「かわいそう」 と言うような人だ。 子供がいるんだらしっかりしなさい。 だらしがない真似はするな。 と母はいつも亮治のお母さんの事を叱っていた。 僕と遊ぶのはいいが、家に泊めたり面倒みたりするのは頑なに断っていた。 「誰かに押し付けて消えそう」 だからだ。 亮治は外の世界をあまり知らなかった。 僕が初めて出来た友達だ。 と、亮治のお母さんも言っていたし。 亮治はおとなしいが人懐っこいところがある。 「亮治くんはいい子なんだけど…」 と母がよく嘆いていた。 礼儀とかはなってないが、「これはダメなのよ」 と教えると素直に言う事を聞く。 初めて聞く事や教わる事が楽しいらしい。 亮治は僕の言う事もよく聞いた。 悪い言い方をすればいいなりなのかもしれない。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加