故郷

3/10
前へ
/229ページ
次へ
「叶夢ーーっ!!お昼っーー!!」 男の子の声 「はいっ!!メロンパンっ」 そう言って、玄関に降りてきた私に手に持ってたメロンパンを渡した。 「今日は、メロンパン?いつ見ても陵んちのパンは美味しそうだね」 「ったりめぇーじゃん!!」 親指をたて、前へ突き出し自慢気に胸を張る男の子 そう……。 これが九歳の一ヶ谷 陵(イチガヤリョウ)である。 「陵が作ったんじゃないでしょぉ?」 鼻を高くしている陵に私は言ってやった。 同じく、九歳の西沢 叶夢。 陵の両親は、先代のパン屋さんを経営していて休みの日のお昼となれば、必ず叶夢の家へ"本日のおすすめパン"を一つ持ってきた。 「あら~陵くんこんにちは。」 「こんちくわぁっー!!」 私の母におやじギャグ……。 一ヶ谷 陵とは、こういう人物だった。 「アハハァッ~。上手ねぇ陵くんは。」 「お母さん、出かけるの?」 二階から降りてきた母に私は聞いた。 「あぁ~。うん。ちょっと買い物に。ちゃんとお留守番しといてよ?」 「ラジャッー!!」 私が返事をする前に陵が先に口を開いた。 「なんで陵が言うの?」 「叶夢が遅いからだろぉっー。」 そう言ってアッカンベーをしてきた。 「陵ぉっー!!」 私は陵に飛びかかった 「こらこら、ケンカはダメよ?」 「だって、陵がぁ……っ。」 こんな他愛のない毎日だった。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加