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「叶夢ーーっ!!お昼っーー!!」
男の子の声
「はいっ!!メロンパンっ」
そう言って、玄関に降りてきた私に手に持ってたメロンパンを渡した。
「今日は、メロンパン?いつ見ても陵んちのパンは美味しそうだね」
「ったりめぇーじゃん!!」
親指をたて、前へ突き出し自慢気に胸を張る男の子
そう……。
これが九歳の一ヶ谷 陵(イチガヤリョウ)である。
「陵が作ったんじゃないでしょぉ?」
鼻を高くしている陵に私は言ってやった。
同じく、九歳の西沢 叶夢。
陵の両親は、先代のパン屋さんを経営していて休みの日のお昼となれば、必ず叶夢の家へ"本日のおすすめパン"を一つ持ってきた。
「あら~陵くんこんにちは。」
「こんちくわぁっー!!」
私の母におやじギャグ……。
一ヶ谷 陵とは、こういう人物だった。
「アハハァッ~。上手ねぇ陵くんは。」
「お母さん、出かけるの?」
二階から降りてきた母に私は聞いた。
「あぁ~。うん。ちょっと買い物に。ちゃんとお留守番しといてよ?」
「ラジャッー!!」
私が返事をする前に陵が先に口を開いた。
「なんで陵が言うの?」
「叶夢が遅いからだろぉっー。」
そう言ってアッカンベーをしてきた。
「陵ぉっー!!」
私は陵に飛びかかった
「こらこら、ケンカはダメよ?」
「だって、陵がぁ……っ。」
こんな他愛のない毎日だった。
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