記憶の断片

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  朱里と別れしばらく適当に歩いていたら今朝の階段のところに来てしまった。 さすがに立入禁止になっており、長い階段の下には血痕が残っていた。あの血痕が春乃の血だということに気付くのに時間はかからなかった。 しかし… 「橋の下とか見ると吸い込まれるって話、ホントなんだ一一一」 長い長い階段の下を見ていると、吸い込まれそうになる。 落ちそうで落ちない感覚… 「足を滑らせたって話…」 あれは絶対に嘘だ。 総太郎さんも朱里さんも、絶対に見間違っている。あたしは絶対、誰かに背中を押されたんだ。 総太郎さんか、朱里さん…どちらかが嘘をついている可能性も…? …判らない……判りたくない… 陽奏は目を固くつぶり首を左右に強く振る。 誰かが嘘をついているなんて…思いたくなかった。 .
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