あの日へ

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  「…そうか、地学はふたりだけだったな。」 「そ、そうみたいですね…」 先生が珍しいようにあたしと総太郎さんを見比べていた。 総太郎さんは学校でトップの存在で、あたしはよくて10番以内に入れるかな…ってくらいだった。 そんな違いすぎるふたりを先生は担当するのだ。難しすぎてもダメ。簡単すぎてもダメ。…相当頭を抱える授業になるだろう。 「とりあえず初めての授業だから挨拶程度の自己紹介をしようか。…じゃあ、まずは君から。」 そう言って指を刺されたのはあたしだった。 「…どうした?」 「え…?あ、は…はい…!」 指名されたのにぼーっとしていて返事をするのが遅れてしまった。それから慌てて立ち上がった。 「1一B、未羽瀬 陽奏です。 よろしくお願いします…」 挨拶をして小さくお辞儀をして自分の席に座り直した。 それから次に彼が挨拶をする。 「1一A、田宮 総太郎です。 よろしくお願いします。」 あたしと同じように挨拶をして、綺麗にお辞儀をした。さすが茶道の家元。何をするにも綺麗だ。 一一一…懐かしい。 あの頃のあたしは同じような目で彼を見ていた。 多分、きっと…あたしはこの時から彼のことが一一一…  .
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