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「長い階段…その下に春乃が…倒れてて…」
あたしはゆっくり記憶を辿り、口に出して言った。
さっきも夢に出てた記憶を。
「それからあたしも階段から落ちちゃって……それで…ッ」
「大丈夫、もういいよ。」
自分から聞いてきたのに総太郎は陽奏を止めた。陽奏はその意味が判らなかったのか不思議そうに総太郎を見つめた。
「その前は覚えてない?」
「え?特に何も…」
「そう…」
「総太郎、陽奏さんは起きましたか?」
総太郎と話していると襖を開けて綺麗な和服を着た女性が部屋に入って来た。総太郎の母親だ。
「母さん。今、起きました。」
「そう。陽奏さん大丈夫?」
「え!あ…大丈夫です…」
総太郎の家は茶道の家元で両親共に師範をしているのであまり家にはいない。家にいるのは用がある時と旧正月の時だけだった。
今日は何か用があったから家の方へ帰って来ているのだろうか?
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