カゼハ、ハルノニオイ

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「さあ、もう忘れ物はありませんか。」 優しい声。 振り向くと、担任がいた。 姉さんなのかおばさんなのか微妙な表情には、母ちゃんよりもあったかい笑顔がうかんでいた。 俺は涙を拭う。 ナカヤマも、袖で涙を拭っていた。 誰が開けた窓から、春の風が教室に吹き込んできた。 涙で濡れた頬には冷た過ぎる。 「・・・ッハ・・・ッハ・・・。」 「ブァックション!!」 ナカヤマが俺より先にクシャミをした。 ナカヤマが笑った。 俺も笑った。 皆、安心したように笑った。 「さあ、もう時間です。これで最後。忘れ物はないですね。」 担任は艶やかに笑った。 「みなさん、さようなら。」
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