カゼハ、ハルノニオイ

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ナカヤマは、俺を見て泣いていた。 俺の暴れる力が弱まったのを感じたのか、友達が俺の身体を放した。 ナカヤマは泣いていた。 ああ、俺、無視したまま帰るところだった。 あのまま帰ってたら、もう二度とナカヤマに会えなかった。 ナカヤマと一緒に、思い出も捨てるところだった。 ナカヤマは嫌なやつで、いつも俺に文句ばかり言って、さも俺が悪いと言わんばかりで。 そして俺は、いつもそれから逃げてばかりで。 ナカヤマはいつも俺がピンチになると助けてくれて。 俺はいつもナカヤマと悪さばっかりしてて。 俺も、泣いていた。 殴られた頬が痛かったが、それよりも、ナカヤマをそこまで追い詰めた自分が情けなくて。 ナカヤマも、俺も、泣いていた。
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