鉱石少女

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「私は桜の花が大嫌いです」  そういうと皆驚き、次には必ず嫌な思い出があるの?と聞いてきます。  私は「いいえ」と答えます。 「花粉アレルギー?」 「いいえ。花粉アレルギーにも食品アレルギーにもなったことはありません」 「酔っ払いが煩いから嫌いとか?」 「嫌いですが、お酒は好きです」  私が表情一つ変えずに言うと、上条先輩はお腹を抱えて笑いだしました。 「雨宮さんって意外とワルいんだな。駄目だよ、お酒なんか飲んじゃ」 「先輩も未成年です。知ってますよ、卒業式のあと、打ち上げに行かれるんでしょう? 絶対に呑んだらいけませんよ?」 「叶わないなあ、君には」  上条先輩はそう言って、アメリカ人のような大袈裟なリアクションでやれやれとため息をつきました。  上条先輩はそんなリアクションをとってもなんだか嫌みに見えない位、素敵な男性です。二つしか年が違わないのに、何故かとても大人っぽく見えます。  しかしそれもしょうがないことなのかもしれません。かたや卒業していく18歳の男の人、かたや今年入学したばかりの女の子なのですから。  上条先輩は、生徒会長を勤めた真面目で品行方正な方です。成績も優秀で、県外の大学への進学もきまっています。私にとっては高嶺の花。  見ているだけで、幸せでした。だから今、とても困っているのです。 「で、どうかな、答えは」 「……」  折角話を反らしたのに、上条先輩は意地悪です。私を追い詰めるように、必ず話をそこに戻すのですから。  私はしょうがなく、口を開きます。 「先輩のことは、……ずっと見てました。多分……私は先輩が好きです」 「何故、多分なの?」  先輩は困ったようにそう問いかけます。  私は固く目を瞑り、胸の中に問いかけます。  私は先輩のことが好きだけど、本当にそれでいいの?と。
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