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原因は村を囲む山々の中で起きた大災害に因る物だった。
山崩れ。
怒涛のような、大地を裂くような、そんな凄まじい音が村を襲ったのは覚えてる。
訳も解らなくて、恐怖に怯えていたのも覚えてる。
だから、あの光景は鮮烈だった。
家を出た先。
視界の先の森が地肌を晒してる。
村を遥かに超える広さで。
まるで巨大な刀に斬られたかのように。
怖かった。
ただただ、圧倒的過ぎて怖かった。
だから、私は両親が復旧作業に向かう事を拒んだ。
行かないでと、子供みたいにせがんだ。
今にして思えば、もっとせがめば良かったと思う。
だから、両親が二次災害に巻き込まれたと聞いた時は、頭の中が真っ白になった。
膝を着いて、身体を震わせた。
どれくらい泣いたかなんて覚えていない。
どれくらい歎いたかなんて覚えていない。
ただ、一瞬で両親を亡くしたという事実だけが転がっていた。
そんな私の傍らで、あの子も泣いていた。
だけど、声には出さず、唇を噛み締めながら涙していた。
そして、今でも忘れない。
あの子は泣きながら、私にあの言葉を言った。
「レイ……これからは俺がお前を護る。……だから、悲しい時も辛い時も俺を頼ってくれ……。一人で抱え込まないでくれ……。力になるから……、なってみせるから……!」
嬉しかった。
家族を全て失ったと思っていたが、まだ居たのだから。
悲しみの涙と嬉しさの涙が入り混じり、更に溢れた。
それからあの子の事を、本当の家族だと思うようになった。
赤髪の……あの子を……。
ガレン……。
もう私は……あんな悲しい想いはしたくないの……。
だから……生きて……。
だから……逃げて……。
涙が頬を伝う。
それは恐怖の涙では無く、ガレンに別れを告げる事無く死んでしまう自分を悔やむ恨事の涙であった。
そんなレイの姿を見て、目の前の冷徹な騎士は僅かに表情を変えた。
理解出来ないと、怪訝が僅かに浮かぶ。
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