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そう説明するシャオだったが、最後は尻窄みに語気が小さくなった。
口元は小さく笑っているが、その眼は笑ってなどいない。
どうやら解らない事が本気で悔しいようだ。
「……言霊……か。なら、それを覚えていれば、いつでもその詠唱技ってのが出せるのか?」
ふと疑問に思った事をガレンは尋ねる。
それに少しの間を挟み、シャオは頷いた。
「……うん、可能だよ。現に僕はそうしているしね。ただ、感情の昂ぶりがそのまま威力に反映するから、普段口にした処で何も出ないから、そこだけ注意ね」
「…………」
シャオから肯定を得て、ガレンは再び思案を始めた。
頭の中で浮かんだ言霊を反芻しつつ、自身の心を見る。
その間に、シャオは未だ手付かずだったスープを飲み干し始めた。
備え付けのスプーンは使わず、行儀悪くも持ち上げた椀から直接スープを啜り、喉を鳴らしながら胃に下していく。
すると、不意にクリスが何かを思い出したように、シャオの手の中の食器を見た。
「シャオ……」
「ん? 何、クリス?」
満腹になったのか、機嫌の良さを示す笑顔でシャオは振り返る。
「シャオ……、さっき朝食食べましたよね?」
「うん。食べたよ」
クリスの確認に、シャオはあっさりと頷く。
「シャオが今食べているのは……ガレンさんの分なのでは……?」
「何っ……!?」
今まで聞き流していた会話にガレンが反応する。
「だって、ガレンが要らないって言ったし」
悪びれもせず、シャオは言う。
「言って無い! ……いや、言ったか……。だが、それはお前の分だと思ったからだ。大体、お前はこの部屋に入ってから直ぐに食い始めていただろ!」
「だって……ガレンの食事を運んでいる最中にお腹が減ったんだもん。成長期だしね」
シャオはもはや完全に開き直った。
小さく舌を出し、子供のように笑っている。
「…………」
だが、それで許される程に食べ物の怨みは甘くなかった。
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