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それも異様なまでに。
まるで怪物にでも遭ったかのように。
聞こえたのは、その子を忌む声。
『悪魔』
そんな単語が聞こえたように思う。
でも、私にはその訳までは判らなかった。
その子には親が居なくて、村で空き家だった私の家の隣に住む事になった。
村の大人達がその子を避けている中、私の両親だけが親の居ないその子の世話をしていた。
私も少なからず周りの影響を受けていたから、初めはその子に抵抗が有った。
でも、両親がその子の世話をしている内に、いつからか私も普通に接する事が出来るようになっていた。
そんな或る日、村人からその子が避けられている理由を聞いた。
信じられなかった。
そして、その事実に恐怖した。
暫くその子を見る事が出来なかった。
見掛けても話し掛ける事なんて出来なくて、逃げるようにして家の中に戻った。
内心、心が痛かった。
でも、整理の出来ていない頭が勝手にその子を拒絶した。
私とは違うって。
近付いては駄目なんだって。
そんな声が聞こえた。
そうして私が避け続けていた或る日、久し振りにその子に遭遇した。
その眼は初めて村に来た時と変わらず、私に冷たい印象を与えた。
でも、良く見たらその眼は冷酷な冷たさでは無かった。
悲しさと寂しさを訴える冷たさだった。
嗚呼、自分は一人なんだって。
だから、仕方無いんだって。
そう納得している眼。
でも、納得出来ていない眼。
それに気付いた時、私の中からその子に対する恐怖は無くなっていた。
同時に、私は自分を恥ずかしく思った。
あの子を理解しようとしないで、私はただ徒に避けていただけなのだから。
だから、私は誓った。
もう、あの子を避けたりしないって。
自分の眼で見て、あの子を理解しようって。
だから、私はそれまで以上にあの子と親しくなった。
いつの間にか、家族同然のようになっていた。
それから何年か経ち、私の両親が死んだ。
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