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そんな女の子を見て、ガレンと呼ばれた赤髪の青年は複雑そうな表情を浮かべる。
「……何か用か、レイ? いや、それ以前にあまり表立って俺と関わるな。でないと、お前まで……」
そう言い掛け、続きを噛み殺すガレン。
それにレイと呼ばれた蒼い髪の女の子は悲しそうな表情を浮かべ、僅かに顔を伏せた。
それでも、それは直ぐに笑顔へと変わる。
「……何をバカな事を言ってるの? ガレンは家族みたいな物なんだから、関わるのは当然でしょ?」
「……そうだな……」
偽りの無いレイのその言葉に、ガレンは少し嬉しそうに頷いた。
そんなガレンを見て、レイも嬉しそうに笑う。
内心、ガレンは暖かい気持ちで満たされていた。
一つの安心感なのだろうか。
村人から拒絶され、ガレンの心はいつも孤独感に苛まれていた。
表情にこそは出していないが、辛くて仕方無かった事だろう。
そんな中、隣に住んでいるレイだけが普通に接してくれていた。
彼女はガレンと幼馴染みで、家族ぐるみの付き合いをしていたのだ。
その所為か、ガレンと最も親しいと言える。
「……ところで、俺に何か用が有るんじゃないのか?」
笑顔を向けているレイに、ガレンは照れ隠しに顔を逸らしながらそう尋ねた。
その言葉に、レイは何か思い出したようにポンッと手を叩く。
「あっ! そうだった、忘れてたよ。ガレンって今日、交通開発に行くんだよね?」
そう言って、レイは確認するような視線をガレンに向けた。
交通開発とは、山に囲まれたこのサクアの交通が不便な為に、邪魔な木々を削り、道を作成する作業の事である。
この村は場所が悪い為に、決して活気の有る村とは言えない。
しかし、これが完成すれば村は確実に今よりも発展出来る。
その為、毎日のように村人が交代で開発に向かう事になっているのだ。
長い年月を掛け、漸く開通寸前と言う処まで来ていた。
今日はガレンがその番のようだ。
「あぁ、そうだな。今日で開通するかもな」
興味が無いのか、まるで他人事のような口調で答えるガレン。
実際、彼にとって見れば他人事なのだ。
村が発展した処で、自分の扱いが変わる筈も無い。
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