4293人が本棚に入れています
本棚に追加
崩される平穏
血。
視界を覆う残酷な赤。
それは鉄の臭いを漂わせる。
そして、目の前に広がるそれは絶望となる。
流れ出す命。
失われる温もり。
死を形として示す物、それが血の正体だ。
刀を振った先、それはそこに顕現する。
何の為に刀を振るのか。
何の為に刀を手にするのか。
それは護る為だ。
命だけでは無い。
そこに在る感情もだ。
怒り。
奪われた理不尽を相手に刻み付ける為、目の前に血を欲する。
悲しみ。
殺された痛みを胸に抱き、二度目を見ぬ為に血を止める。
恐怖。
目の前の血に慄き、そこから逃れる為に足を動かす。
どの感情も、血が最大の引き金となる。
それは死を連想させる。
それは脳裏の深くにまで焼き付く。
そして、それが人の心を限界にまで爆発させる。
心を突き破った感情は、外で意志を示す何かとなる。
それが現れた時、もう後戻りする事は出来無い。
その人間は、既に『人』という定義を失ったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!