Ⅰ.Half Blood

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  「ハイネ様は街のどこに用事があるのですか?」   「魔物の討伐を研究してる施設、みたいなところに案内してくれると助かるよ」   ハイネはそっとカップを取った。 彼自身、特に意識したわけではないのだらうが、カップを手に取り、口元に運ぶその一連の動作は王族なような品に溢れていた。 どこかの街の上級貴族なのだろうか、とマーサはあたりをつけた。   「魔物の討伐研究ならどこの街でもされている筈ですが、どうしてヒースグランなんでしょうか?」   「文献を調べるとわかるんだけどね、この街は騎士団の派遣要請が一番少ない街なんだよ。妖精の森を隔ててすぐ先は魔物の巣窟だっていうのに」   「たぶん、巫女様がいらっしゃいますからね」   かかった。 内心でハイネはほくそ笑んだ。   「巫女?」   「はい。魔物の魔術を抵抗(レジスト)する血を持つ巫女様がこの街を守ってくれてるんです」   抵抗(レジスト)するのは吸血鬼のみではないのだろうか、とハイネは考えた。 彼女の言い回しだと、全ての魔物に共通のように聞こえる。   「その巫女が、結界でも貼ってるの?」   「結界はもちろん。直に戦う事もあるそうですよ」   なるほど、不可視の魔術でもかけているのだろう。 この様子では彼女が知っている可能性は低い。 深く追求して怪しまれるのもよくない。 ここらで話を切り上げるべきだろう。   「それはすごいね。この街だけの騎士みたいなものか、なるほど。是非お会いして話をしてみたいよ」   「会うのは難しいと思いますよ。多忙、というか色々よくない噂も聞きますし。取り敢えずお食事お持ちしますね」   マーサはキッチンに行き、軽食の仕度を始めた。 思ったよりも首尾は上々。 腑に落ちないところもあるが、上手くいきそうだ。 ハイネはもう一度カップを手に取り、ゆっくりと紅茶を飲み干した。 悲願がもう少しで叶う。 知らずに彼は笑っていた。  
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