触手生誕

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『そっち行ったぞ!!』 『わーってんよ!!(…ったく…自分が討ち漏らした癖にぃぃ!)』 『クケェェェッ!!!!』  異形が迫る。牙で、爪で、敵である俺達を切り裂かんと疾駆する―――が。 『吠えんなよウルセェから……テメーはさっさと……死んでろ!!』  一閃、避けつつ手にした短剣を振るう。 『ギッ!?』  刀身を軽く、鋭く。ただひたすらに軽さと速さを追い求めた短剣は相手の身体を確実に傷付けて行く。 『グ………ケェェッ!!』  擦れ違い様に斬られながらも、体勢を立て直した敵が飛び掛かってくる。 『まだ動けるのか!危な――!』  仲間が叫ぶ。速さの代償として一撃の重さを失った短剣、それ故に致命傷を与える事が難しい。  だが―――― 『無問題(モーマンタイ)』 『グ…………ェ…』  どさり、と重い音を立てて敵が崩れ落ちる。 『……毒、か?』 『御明察。単純な殺傷力はナイフに毛が生えた程度だけどね、毒性は凄いよ?何つってもレア武器だから』 『歪な刃だとは思ったが…確かに見た事の無い武器だな』 『しかも各種ステ強化のおまけ付きww』 『ははっ。そいつぁご機嫌だな…と、向こうも片付いたようだ』  先ほどの敵の群れを追い込んできた別動隊の女二人が戻って来た。 『おつー』 『おつかれさん、ヤれた?』  ヤれた?って何か響きがエロいな……とか考えつつ応答。 『楽勝もイイトコだな。誰かさんが一匹取り逃がしそうになったけどw』 『それは言うな…ああ、そっちも無事な様だな。そんじゃ報酬受け取りに戻るか』 『『『了解ー』』』 『これで欲しかったアイテム買えるよーwwんじゃ私達落ちるわ、ありがとねー☆』  街に戻り報酬を受け取った所で女二人がログアウトし、残ったのは俺ともう一人。 『どうする?二人じゃ中途半端だし今日は落ちるか?』 『そうするわ。そんじゃまたどこかで』 『ああ』  メニューを開き、ログアウトを選択―――ヘッドマウントの視界が暗転する。 「―――っふう…中々の性能だったな」  マウントを外し独りごちる。先ほどまでやっていたのは多人数参加型のネトゲで、俺は所謂チーター…データを改竄し俺TUEEする類の人種である。  さっきのも武器の性能を確かめる為に行った戦闘だったり。 「さて…新しいツール落ちてないかな…」  一度手を染めると魅力に逆らい難いんだよねーww  そんな感じで廃人を楽しむ毎日を過ごしている。
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