触手生誕

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 ヒュンッ、と言う聞き慣れた音と共に視界が開ける…見慣れたスタート地点。 「無事ログイン出来たな…こんだけいじってたら引っ掛かるかと思ったが…」  まさか升プロテクト対策まで組み込んであるのだろうか?まあ無事なら今はいいか。 「取り敢えず街を回るか…動作が自然なら完璧だけど」  自分の分身を操作し、一通り街を歩く。武器屋、道具屋、冒険者ギルド。  升であらゆるアイテムを所持してる俺にとって目新しい物等無いが、周りから見て不自然な所が無いかを確かめる意図で人目に付くように練り歩く。 「ふむ…見慣れないキャラだから多少は見られるか…まあ許容範囲かな?次は触手だけど…自由に動くのかコレ?」  SIDE:冒険者達  いつもの仲間と街で話し込んでいたら、見た事の無いキャラがログインして来た。骨を意匠した鎧、背中に浮かぶ歯車の様なリング、右半身を隠すマント…正に死神と言う様な恰好だ。  一般キャラは固有グラフィック+カラーチェンジ位のはずだが…うわ怖!目が死んでらっしゃる! 「おい…!あれ見てみろよ」 「あぁ?何………うわ…ヤバそうな感じの奴だな」 「だろ?見た事無いデザインだな…どっかのギルドマスターとかか?」 「あー…マスターと副長はオリジナルグラフィック貰えるんだっけ?にしても…近づいたらサクッとイカれそうな…」 「違いないww」  何て話しながら観察していたら、ブツブツと何事かを呟いた後右腕を覆っていたマントを翻した。  そしてそこには――異形が。 「な……え…?」  どうゆう訳か中が見えないマントの陰から、ぬめぬめとした粘液に覆われた肉色の触手が腕に食い込み絡み付いていた。  現実に居る俺の背筋が凍る。アレは真っ当な奴じゃない、と本能が理解したらしい。周りを見ると他キャラも皆一様に固まっていた。  何だあれ、いや何かのイベントじゃね?て声も聞こえる。 (イベント…確かにありそうだけど…)  なんて思案していたらそいつらが謎キャラに近付いて行った。 「おい!お前!何かのイベントキャラか!?」  いきなりお前呼ばわりかよ…間違いなくあれはリアル厨房だな… 「シカトすんな!殺すぞ!」  しかもDQN…救い様が無い馬鹿だなー…ネチケなってなきゃそりゃシカトされるわ…あ、謎キャラ振り向いた。うわめっちゃメンチ切ってるw 「キャンキャン"吠え"んなよデブゥ…?クチャクチャの"挽き肉"にしちまうゾ…?」
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