一つ目小僧の双眸

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   夏の満月は、厚い雨雲に隠された。  蝉と鶯が鳴き、大雨を起こしている。  それほど泣いてしまったら、小僧が逝くに逝けないではないか。  三途の川も、水かさが増え、渡れなくなってしまうかも知れない。  一つ目小僧は、妖怪でなくなった。  笑われたくなかったのか、それとも、人になりたかったのか。  目を二つ欲しがったのは、単なる思いつきだったのだろうか。  今日も鶯が、法華経と鳴く。
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