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「華…スコーンを食べる手が止まっている。口に合わなかったか?」
見当違いな棗の台詞に、華は首を横に振る。
「違うの…。あの…私の部屋って何?」
「そのままの意味だ。華は今日からここで暮らすのだから…」
「え…」
華は持っていたスコーンを床に落とした。
棗の言葉に華の理解が着いて行かず、頭の中は真っ白になっていた。
「華…? どうしたんだ?
北村、華のスコーンを…」
「はい…失礼致します」
北村は落ちたスコーンを拾い、床を拭くと新しいスコーンを華に渡す。
けれど華は受け取らずに立ち上がった。
ベルも当たり前の様にミルクを飲むのを止めて華を見上げる。
「私……帰ります。…帰して下さい」
華はぼんやりと遠くを見つめて呟いた。
棗も静かに立上がり、さっき北村が入れていた紅茶をティーカップに注いで戻って来ると、華の前に差し出した。
「華、これを飲むんだ」
「いらない……帰りたい」
「華…飲んで? 飲んでくれたら……」
棗はその先の言葉を言わなかった。
けれど華は棗からティーカップを受け取り、ゆっくりと口を付けた
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