*嵐を背負った来客者

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北村は棗に謝ると、車の扉を閉めた。 すぐにエンジン音が響き、車がゆっくりと発進する。 「え……嘘!!やだっ!!」 華が扉を開けようとするも、扉にはロックが掛かっていた。 「なんで…!…ベル!!」 後ろの窓には、懸命に走るベルがいた。 華がいなくなると、あの家はベル一人になってしまう。 嫌だ…ベルと離れたくない! それを考えると華は、涙を流した。 「お願い! お願い…ベルが……ベルも一緒に…」 逃げられないのなら、せめて愛犬と一緒にいたい。 その願いを、華は隣りに座る棗に懇願した。 涙する華と、後ろで車を追いかける犬を見た棗は慌てた。 「おい…おい!! 北村、車を止めろ!! 早く!!」 車は止まり、棗は扉のロックを開けた それと同時に華は車を飛び出し、ベルを抱き締めた 「ベル…ベル…」 「華…」 棗も車を降りて、華を呼ぶ。 ここから村までは遠い。 逃げてもすぐに掴まってしまう。 華は遠くに映る住み慣れた町を見ながらそう考えた。 ベルを抱き締め、大人しく車に戻る華に、棗はどう接したらいいのか分からないでいた。
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