250人が本棚に入れています
本棚に追加
北村は棗に謝ると、車の扉を閉めた。
すぐにエンジン音が響き、車がゆっくりと発進する。
「え……嘘!!やだっ!!」
華が扉を開けようとするも、扉にはロックが掛かっていた。
「なんで…!…ベル!!」
後ろの窓には、懸命に走るベルがいた。
華がいなくなると、あの家はベル一人になってしまう。
嫌だ…ベルと離れたくない!
それを考えると華は、涙を流した。
「お願い! お願い…ベルが……ベルも一緒に…」
逃げられないのなら、せめて愛犬と一緒にいたい。
その願いを、華は隣りに座る棗に懇願した。
涙する華と、後ろで車を追いかける犬を見た棗は慌てた。
「おい…おい!! 北村、車を止めろ!! 早く!!」
車は止まり、棗は扉のロックを開けた
それと同時に華は車を飛び出し、ベルを抱き締めた
「ベル…ベル…」
「華…」
棗も車を降りて、華を呼ぶ。
ここから村までは遠い。
逃げてもすぐに掴まってしまう。
華は遠くに映る住み慣れた町を見ながらそう考えた。
ベルを抱き締め、大人しく車に戻る華に、棗はどう接したらいいのか分からないでいた。
最初のコメントを投稿しよう!