第1章 砂爆新撰組

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第1節 「克、幕臣とはつまらんのう」 このやる気のなさそうな人物、名を呼龍馬という。 知人の計らいにより幕府の幕臣を勤めていた。 「まあ、そう言わずに仕事やりましょう。」 一方、呼龍馬を宥める人物、名を克麟という。呼龍馬の義弟で呼龍馬の信頼も厚く、一番の理解者である。 「こがいなツマラン仕事は上の連中にやらせとけばええがじゃ。」 「あっ!そう言えば、この華の都には砂爆新撰組と言う都の治安を護る部隊があるみたいですよ。」 「あー、噂は聞いちょるゼヨ・・・。のう克、いっちょ行ってみんがか?」 呼は笑顔で克を誘う。 「呼さん、仕事はどうするんですか?」 困ったように克が尋ねる。呼龍馬はスクッと立ち上がると・・・ 「そがいなもん、他の奴にやらせとけばエエゼヨ。」 呼龍馬は一目散に走り出した。 克「あぁ!呼さん、待ってくださいよ!!!」 克も呼龍馬の後を追った。 ・・・ 壬生屯所前 「おうおう、なんじゃか面白そうじゃのう。」 呼龍馬は目を輝かせながら克に言った。 「余り関わらないほうが身の為ですよ。」 克は困ったように呼龍馬に注意する。 呼龍馬は克の注意を聞かずに屯所に歩み寄って行った。 (困った人だ・・・) 「お前達、何か用か?」門番の隊士が呼龍馬達に向かって凄む。 「ん?ワシ等は砂爆新撰組がどがいなもんか見に来たがじゃ。中に入れてくれんかのう。」 呼龍馬は笑顔で門番達に話し掛けた。 「ダメだダメだ!ここはお前達の来るような所ではない!早々に立ち去られよ」 門番は睨みながら呼龍馬に怒鳴り散らした。 「私達は幕府の仕事をしている幕臣、何とぞお目通り願いたい。」 克が丁重に門番に頼み込んだ。 「いくら幕臣といえどここを通す訳にはいかん」 「堅苦しい奴等じゃのう」呼龍馬はふてぶてしく呟いた。 「なんだとぉ!!」 「あぁ、もう、呼さん相手の神経逆なでするようなこと言ったらダメですよ。」 克は隊士と呼龍馬の間に割って入った。 そこに明らかに門番とは威風の違う隊士が現れた。 「こら!!お前達そこで何を騒いでいるんだ!!!」 「おぉ!!蒼さんじゃないがか!!」 「ん?・・・おぉ、呼さん、こんな所でどうしたんですか?」 蒼鹿、こう呼ばれるこの隊士は、新撰組弐番隊隊長である。 弁財藩出身の上士で呼龍馬とは幼なじみ。 剣術大会では呼龍馬と勝負するも、呼龍馬のトリッキーな剣術で敗れてしまう。 しかし、その剣術は新撰組でも壱弐を争う程の腕前である。
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