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(だからって、二年生から準備っていうのも、今更だろ?)
苛立ち気持ちを抑えながら、和臣は生徒会顧問の新庄順一【シンジョウジュンイチ】から渡された、試験後に開催される生徒会選挙のスケジュールをまとめていた。
これも、本来なら彰文の担当だ。
和臣はハアッとため息をつきながら、生徒会室のパソコンでスケジュール作成をしていた。
他のメンバーは和臣が苛立っているのを、彼の体から発しているオーラで感じ取り、極力刺激を与えないように黙々と仕事をしている。
こういう時の和臣を怒らせると、本当に怖いのだ。
合同学園祭の時も和臣は常に怒り、周囲から恐れられていた。
それなのに、いざ相手側の学校に行くと猫を何百匹も被った態度で接し、馴れた頃には素に戻っていた。
中学校から和臣を知っている人間は、彼の二面性を知っているので驚きはしないが、初めての人間はかなり驚く。
イライラしながらパソコンを打っていると、ボードの横に置いてある携帯のバイブが鳴った。
それに気が付いた和臣は手を休めて、携帯を手に取ると画面を開いた。
どうやら、メールが届いたようである。
ボタンを操作して、メールを開くと和臣は少しだけ笑みを浮かべた。
一ヶ月前(?)から付き合い始めた、私立翠嵐学園高等部二年で、生徒会副会長でもある菅生律【スゴウリツ】からのメールだ。
律とは、合同学園祭の時から付き合い始めたことになっているが、本当は違う。
三ヶ月前、和臣は近所に住む一歳年下の幼馴染である、一之瀬希【イチノセノゾミ】に頼まれ、彼女の代わりに律と付き合うことになったのだ。
理由は、今はいないが律の『自称、律の彼女』と名乗っては、取り巻きの男子生徒を使っては嫌がらせをしていたのだ。
それを律は知らない振りをして放置し、結果として『菅生律は女をとっかえ引返している。』という悪い噂を発生させたのだ。
希から話を聞いた和臣は、大好きだった彼女のために協力をすることに決めた。
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