馬鹿

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 土曜日。  西の空で太陽が今日の役目を終える頃、京香からブレイクを見に行かないかという誘いの電話があった。  中心街のはずれにある公園では、夜になるとブレイクダンスを練習している男達が必ずいる。彼らはチームを形成していて、自分達が使うエリアや曜日なんかも暗黙の了解で決まっているらしかった。  今日はカズキ達も練習しているはずだ。京香の目当てはそれである。1コ上のカズキとは半年前くらいに出会った。ブレイクをやってる同じクラスの友達を通じて知り合ったのだ。  ギャル男とまではいかないが、バカ発言が多くチャラい男である。  しかしながら運良く顔はそこそこ整っている為に、面食いの京香からの支持を得ているわけだ。    いつものようにブレイクをやってるのを見たり、その場にいたみんなとだべったりしてるうちに喉が渇いたので、私は輪から外れて自販機にジュースを買いに行った。おつりを財布に入れた時、   「俺のも買って」   と声がした。   「自分で買えば?」   「冷てえ女」    吐き捨てるように言ってからカズキはコーラを買った。
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