馬鹿

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 缶のプルタブを開けたくせにカズキは一口も飲もうとしない。   「おまえこないだ国道沿いのファミレスいたろ?」   「あー、いたかも」   「あん時のツレの男ってまさか彼氏?」   「そうだけど?」   「は!?おまえマジで言ってんの!?」    こんなリアクションにはもう慣れている。  しかしさすがの私も次の言葉は予測できてなかった。   「俺のことフッといてあんな奴と付き合ってんのかよ」   「は……?」    バカなやつだとは思っていたが記憶までおかしくなってしまったんだろうか。   「あのさー、告られてもいないのにどうやってフるわけ?」 「告ったじゃねーか。メールで」   「はぁ?メールって……えっもしかしてアレが告られたことになってんの?」    ぼんやり思い出した。  そういえばだいぶ前……孝太と付き合うよりも前。カズキと脈絡のないメールをしていた時があった。   『楓って彼氏いる?』   『いない(>_<)てゆーかいたことない』   『俺とつきあっちゃえよ(^_^)v』   ……こんなやりとりだったと思う。  確か私は『遠慮しとく笑』とかそういうノリで返したハズだ。  果たしてあれを告白と言う人が世の中には何人いるのだろう?メールで、おまけに顔文字まじりの文章だ。真剣に受け取る方が難しい。
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