恋いのうた

〈前編〉 １ ハプニング

　私も相当焦っているけれど、一度高血圧で倒れた社長を気遣って、なるべく落ち着いた口調で話した。

　だけど両方解約するなんて、先輩の姿を消そうとする決意は相当固いよね。

「とにかく、彼女のマンションに行って、様子を見てくる」

　そう言って社長が机の上にあったマークⅡのキーを上着のポケットに仕舞い、会社を後にした。